東京大学先進融合部会
(Department of Avant-Garde Arts)は、
教養学部の芸術教育を担う組織です。
組織

先進融合部会は教員2人と事務員1人から成るとても小さな部会です。アドバンスト文理融合運営委員会というすこし大きめの組織と、芸術創造連携研究機構というもっと大きな組織のサポートを受けながら、主に教養学部の前期課程(1、2年)向けの芸術制作授業を運営しています。

メンバー

誰がいるの?

パフォーマンス研究/制作を専門にする中井悠(准教授)とマンガ研究を専門にする三輪健太朗(准教授)、事務を担当する澤栗由佳の三人体制です。

授業

何を教えているの?

前期課程の文系理系両方の学生向けに芸術制作の実践的なワークショップ型授業を開講しています。《認知と芸術》、《身体と芸術》、《メディアと芸術》《研究入門》という大まかなカテゴリー区分のもと、実験音楽、楽器制作、マンガ分析、拡張されたダンス、数学的デザインなど多彩なアプローチで創造のからくりを解きほぐし、自らの手で組み立てることを学べます。前期課程以外の学生が聴講という形で参加可能な授業もあるので興味があれば部会か担当教員に連絡してください。

《認知と芸術》= 《身体と芸術》=● 《メディアと芸術》= 《メディアと芸術》=

(偽)実験音楽史

中井悠|月曜4限|Sセメスター

「実験音楽」を「論」として真面目にお勉強することほど、非実験的で、実験音楽の精神に反することはありません。この授業では「実験音楽」を、歴史上の閉じたジャンルとしてではなく、これまで「音楽」と呼ばれてきた営みを問い直し、その外部へと切り開いていくたくさんの事例の開かれたネットワークとして考えます。そして、過去の実践や理論や問題を検討しながら、自分たちでもじっさいに実験を繰り広げることで、あり得たかもしれない実験音楽のかたち(作品、作曲家、演奏家、イベント、コンサート、運動、論争、研究書、などなど)を構想・空想・妄想していきます。そうすることで、これまで「実験音楽」と呼ばれてきた営み自体を問い直し、その外部へと切り開いていくことを目指します。理論的には「偽」という概念と「実験」という概念がどのあたりで重なりうるのかを探っていきます。

中井悠/副産物ラボhttps://www.selout.site/jp

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アルシ・コレオグラフィーズ

中井悠|月曜5限|S/Aセメスター

口癖、手癖、怠け癖、思考壁、酒癖、難癖、曲者、潔癖、寝癖、癖が強い、などなど、日本語の「クセ」という言葉は、単なる「習慣(habit)」には収まらない広がりを持つ不思議な概念です。この授業では人の持つさまざまな「クセ」を、当人が知らない間に身体や思考に植え付けられた根源的な「振り付け(コレオグラフィー)」とみなし、拡張されたダンスの問題として捉えます。そしてそのような身体や思考の偏りを受講生どうしの相互観察を通じて探り合い、個々のクセの来歴を明らかにしたり、それを他人に移したりすることで、個人の「その人らしさ」という感覚がどこで生み出され、どのように変容しうるかを検証します。新しい振付を考えることでダンスをいわば足し算的につくる通常のアプローチとは逆に、各自が気づかないうちにすでに踊っている振付を露わにすることで引き算的にダンスを浮かび上がらせる試みです。

中井悠/副産物ラボhttps://www.selout.site/jp

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マンガにとって
コマ割りとは何か

三輪健太朗|火曜2限|S/Aセメスター

この授業では、視覚芸術としてのマンガの「コマ割り」をめぐって、講義と実践的演習の両面から探究します。マンガの制作には、物語を構想すること、絵を描くことなど、様々な技術が用いられますが、中でも「コマ割り」はこのジャンルに固有の要素として、マンガに関する従来の批評・研究の中でも特権視されてきました。本授業では、そうした従来の理論について学びつつ、受講者各自が手を動かして実際にコマ割りという作業を体験することを通して、このジャンル固有の特性について考えを深めることを目的とします。受講者の作成物は、授業内で発表やコメントをしてもらう予定です。あくまでも実践を通して理論的に考えることが狙いですので、マンガ制作の技術的な向上を指導する授業ではありません(これまでのマンガ制作の経験も不問とします)。またコマ割りに焦点を当てた内容ですので、絵の巧拙は一切問いません(全然描けないという方でも結構です)。

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動きと静止の近代視覚文化

三輪健太朗|金曜2限|Sセメスター

動画共有サイトや各種SNSに見られるように、現代人の生活を取り巻く情報のなかでは、動画=動く映像が極めて重要な位置を占めています。しかし、大衆文化における動く映像の原型といえる映画の仕組みに目を向けてみれば、それは現実の時間の流れを切断し静止させる瞬間写真に基づいています。19世紀に発明された映画は、動きと静止の関係をめぐる様々な技術的・科学的・文化的な関心と実践の絡み合いから生まれてきたメディアだったのです。そして、静止写真を動かす実写映画に限らず、止まった絵を動かすアニメーションや、絵を複数並べることで動きを描写するマンガなども含め、近代の視覚文化の多くは、動きと静止の関係に立脚し、そこから魅力を生み出していると考えられます。「視覚文化論」や「メディア考古学」と呼ばれる研究の観点を学びつつ、映像文化のルーツともいえる光学玩具や初歩的な映像作品を実際に制作することを通して、近代的なメディア体験への理解を深めることを目指します。

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つながるかたち

舘知宏|集中|Sセメスター

「研究入門」では、芸術と諸学術の協働により得られた諸分野の問いに実際に取り組み、教員のメンターシップのもと、研究発表、展示・公演、社会実装などを目指します。「つながるかたち」では、手を動かして「かたち」をつくることを端緒とし、科学的視点で発見すること、問いを得ること、その問いを解くことの連鎖を実践します。研究室のデジタルファブリケーション機器などを用いた製作や、CAD・プログラミングによるモデリングなども行います。

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副産物ラボ

中井悠|月曜6限|S/Aセメスター

さまざまな専門を持つ学生とともに、広い意味での「パフォーマンス」の研究と制作を軸にしながら、「癖」や「影響」など多様なトピックに関するセミナーや出版物の企画を行なっています。同時に、ラボ名のとおり、個々の目的を追求する過程において生じてくる思いがけない副産物にも注目し、それらを活動に折り返す回路を開発することも目指します。

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インタラクティブ表現実践

筧康明|木曜5ー6限|Sセメスター

アート・デザイン領域において近年注目されるインタラクティブ表現や参加型の体験創造について、実践を通して学ぶことを目標とする。座学とプログラミング等を通した実践を組み合わせながら進める。まず、インタラクティブアートの歴史やそれらを支える技術の動向について学び、具体的な事例についても教員やゲストの活動紹介を通して触れる。また、インタラクティブ表現を制作するためのクリエイティブコーディング環境を整え、カメラ入力および画像処理を用いたインタラクションの基礎と制作方法について学ぶ。後半の期間は主に、履修者自身によるインタラクティブ(作品)表現の提案を行い、フィードバックを受けながらコンセプトおよびプロトタイピングの実装を進める。

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「生成AI」以降、
人間の創造性を問う

伊東乾|火曜6限| Sセメスター

2023年3月OpenAIが公開した「GPT4」以降、「生成AIは文書も(静止)画像も<クリエート>する」と喧伝され、実際に人間のクリエータが解雇される傾向も一部で見られた。典型的なのは「マンガの背景描き」「アニメの背景描き」など、なにかそれらしいものが埋まっていればよい部分で「人件費の削減」が進んでいる。担当者は古典的な音楽家で20世紀の間は地上波テレビ番組(「題名のない音楽会」)の責任者など、伝統的に手や頭、耳と感覚を使う楽隊業として生計を立てていた者で、東京芸術大学美術学部・音楽学部双方を筆頭に、古くからの芸術に根を持つ作り手の側に立って、こうしたシステムが出て以降、もっぱら人間のクリエータにしか求められない「ものづくり」を大切に考えている。2024年5月には東京都美術館で「生成AI以降 人間の創造性を問う」展示を並行して準備しており、これとの連携も念頭に、実技の観点から問題を扱い、駒場生なりの手ごたえをもって帰ってもらいたいと思う。

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